2012年10月に読んだ本 | 砂場

砂場

本の感想と日記。些細なことを忘れないように記す。

10月から読書メーターを使ってみてます

2012年10月の読書メーター
読んだ本の数:5冊
読んだページ数:1425ページ
ナイス数:5ナイス

ニューヨーク革命計画 (1972年)感想
全体のストーリーは雲散霧消している。断片的なシーンの描写ばかりで、登場人物、場面、時間などあらゆる要素が次々に入れ替わる。語り手すら別人になる。 女性のように見える木目。その女性はロープで縛られていて、そこに男が現れる。木目ではなかったのかと思っていると、その構図がそのままポスターとなって駅の構内に貼られている。 読み進めるほどに混乱していく。けれどメロディはなくても反復されるリズム(モチーフ)によって、ミニマルテクノに陶酔しているような気持ちよさがある。眩暈がする。
読了日:10月27日 著者:平岡 篤頼,アラン・ロブ=グリエ


金の仔牛金の仔牛感想
18世紀のパリで追い剥ぎで生計を立てていた若者が株バブルに乗って成り上がっていく。一癖も二癖もある策士たちが活躍するド直球のコンゲーム。お金だけでなく、絶世の美女のヒロインも引く手数多なので、さらに複雑な様相に。青髭を彷彿させる殺人狂の貴族とか、暗躍する三つ子の老人とかキャラ立ちすぎだ。数字が苦手な私としては細かい取引の取り決めに混乱しっぱなしだったが、痛快なストーリー展開で楽しめた。
読了日:10月22日 著者:佐藤 亜紀



しろいろの街の、その骨の体温のしろいろの街の、その骨の体温の感想
『マウス』に近いれど、こちらのほうがスクールカーストでの自意識について深く描いている それぞれの成長過程の変化による小学校から中学校に上がってからの残酷な立ち位置の変化。自意識過剰な内面を徹底的に描いていて、自分の思春期の暗い部分を、性の差はあれど、いろいろと思い起こさせる。 自意識過剰であるがゆえ、「過剰」だからこそ辿り着くことのできたラストシーン。の真っ白な光が体を貫く。 村田沙耶香は半分くらいしか読めていないけど、全部読みたいなと思う。
読了日:10月19日 著者:村田沙耶香



タイガーズ・ワイフ (新潮クレスト・ブックス)タイガーズ・ワイフ (新潮クレスト・ブックス)感想
『タイガーズ・ワイフ』テア・オブレヒト/新潮クレストブック 祖父が死んだ。紛争の爪痕の残る土地にワクチンを届ける傍で、取り乱した祖母からの連絡を受ける。子供の頃、毎日ように祖父と一緒に動物園にトラを見に行った。祖父と過ごした日々。それを思い返すことは自分の過去を遡ることでもあった。祖父と歩いた真夜中の街。わたしにだけ語ってくれた「不死身の男」と「トラの嫁」の話。 祖父はようやく口を開いた。「分かるだろう、こういう瞬間があるんだ」 「どんな瞬間が?」 「誰にも話さずに胸にしまっておく瞬間だよ」 P6
読了日:10月13日 著者:テア オブレヒト



いつか、この世界で起こっていたこといつか、この世界で起こっていたこと感想
原発事故をとても遠くから描く。遠く離れた所から。けれどそれは繋がっている。別世界の出来事に思えても、私たちの生きる世界はどこかで繋がっている。 原発事故が起きたから、私たちの世界が一変したように思える。けれど、事故が起きる前から、世界は原子力という存在と深く関わってきた。過去にも天災や人災が繰り返さてきた。 立つ場所は違えど、誰もが大きな流れの中にいることを感じる。「分かる」とは「分ける」ことから始まるとどこかで聞いたが、「分からない」ことの「分けない」ことの意味を考える。
読了日:10月8日 著者:黒川 創

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