『理性の限界』高橋昌一郎/講談社現代新書 | 砂場

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理性の限界――不可能性・不確定性・不完全性 (講談社現代新書)
高橋 昌一郎
講談社
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いくら議論を尽くしても答えに辿りつけない。仲のいい友人たちと飲みに行くと、時事問題などで議論が白熱することがあるが、いつも答えなどでない。もっと様々な知識を得て、感情的にならず、理性をもって話しあえば、答えが見つかるはずなのに(と思いながらもう10年以上も同じようなことを繰り返している)。

けれど学問の世界は違う。そこには絶対的な「問い」があり、隙の無い論理の積み重ねで完全なる「答え」にたどり着く。そう思っていた。今現在、答えの見つかっていない「問い」でも、いずれそこに「答え」が発見されるのだろうと。この本は「選択の限界」「科学の限界」「知性の限界」という3部構成の討論形式になっている。

専門家から一般人まで様々な視点によって問題を深く検証していき、その結果、答えは見つからない。これは学術的にはとても悲しむべきことなのだろう。だけど、僕はなんだか嬉しかった。そうか答えはないのかと。この本を10年前に読んでおけば、あんな不毛な議論ばかりしなくてもよかったのに。